映画「ラ・ラ・ランド」怒涛のラスト15分!切なすぎるエンディングにエルメスの香水を
アカデミー賞6部門ほか、数々の賞を総ナメにした「ラ・ラ・ランド」。音楽やダンスに加え、カラフルな映像やロマンチックな恋の展開に誰もが甘いハッピーエンドを期待したと思いますが、ストーリーは思わぬ方向へ。ハッピーエンド?それとも・・・。賛否を巻き起こした衝撃のエンディングに、エルメスの香水を贈りたいと思います。
2019年08月29日更新
[1]「ラ・ラ・ランド」内容とあらすじ
2016年(日本では2017年2月)に公開されたロマンティック・ミュージカル映画。
「ラ・ラ・ランド」というのは、“ロサンゼルス”と“現実から遊離した精神状態”を意味しているそうですが、ポップな響きでありながら何か含みがある感じですよね。
映画を観たらなるほど…といろんな解釈をすることができるんですが、ここではいったん置いておきましょう。
舞台はロサンゼルス。渋滞している高速道路で、人々が一斉に踊り出すシーンで幕を開けます。
色鮮やかでド派手なパフォーマンスは、しょっぱなからこの映画の見せ場にもなっていて、この先どんな物語が展開されるのか期待が膨らむオープニングでもありました。
自分の店を持ち、“本物のジャズ”を思う存分演奏したいと思っているジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)と、映画スタジオ内のカフェで働きながら女優を目指すミア(エマ・ストーン)。
主人公の二人はこの高速道路で、なかなか悪印象な最初の出会いを果たします。
その後、偶然入ったレストランでセブのピアノ演奏を目にしたミアは、その演奏にとても感動しセブに声をかけますが、彼は無視して店を出て行ってしまいます。
セブはオーナーが指示した曲を無視して、自分が演奏したい曲を演奏したためクビを言い渡された直後だったので、とてもにこやかに会話などできる心情ではなかったんですね。
気まずい再会となった二人ですが、その後また出会う機会があり親交を深めていくうちに、自然に恋へと発展します。
お互いの夢を尊重し、励まし合いながら愛を育んでいく二人ですが、お金を稼ぐため知り合いのバンドに加入し、自分の意に反した不本意なピアノを弾くセブと、オーディションを受けては落ち、受けては落ち、を繰り返すミア。
徐々に疲弊していく二人の間には少しずつすれ違いが生じ、遂に大きな衝突が起こります。
そんな中、ミアの舞台を観た配役ディレクターから、ぜひミアに大作映画のオーディションを受けて欲しいと連絡が入ります。
結果、オーディションには合格するのですが、撮影のため少なくとも7カ月間はパリに行かなければなりません。
喧嘩中ではあったものの、これを機に二人は将来について話し合います。
パリに行き、夢に向かって全力で仕事に没頭するべきだとミアの背中を押すセブ。でも私たちはどうなるの…?わからない、様子を見よう。
「ずっと愛してるわ」
「俺も愛してるよ」
この言葉を最後にミアはパリへ旅立ちます。
このシーンは、二人の未来についてあれこれ想像せずにはいられないとても重要な場面です。
パリへ旅立ったミアは女優として成功するチャンスを手に入れられるのか?
セブはこのままバンドに留まって不本意なピアノを弾き続けるのか?
二人は破局?
それともロサンゼルス〜パリの遠距離恋愛を乗り越えてゴールインとなるのか…?
二人の恋が実ることを切に願いながら、衝撃のエンディングへと続いていきます。
[2]悲喜こもごもの結末と感想
夢を追う男女がなかなか自分の思うようにならない現実を前に、恋と夢の間で苦悩する…。ストーリー自体は割と単純でわかりやすい映画です。
ただ、その単純さが逆にあの壮大なエンディングを効果的に盛り立てているように思います。
そのインパクトゆえに、ついそこに至るまでの描写を忘れてしまっていますが、振り返ってみると、見事に計算され尽くした演出がされていることがわかります。
ミアやセブの心情に合わせて“色”が変化しています。それはファッションであったり照明であったり。
流れる音楽も、二人がハッピーな状態の時と不穏な時とでは当然違いますし、さらに二人の住む部屋のインテリアや装飾に至るまで、全て微妙な心の変化を投影させているんですね。
そういう緻密な演出と、主役の二人の圧倒的な演技力も相まって、物語の始まりから終わりまで、隙のない完璧なものになっています。
本当に、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンは素晴らしい俳優さんだと思いました。心の機微や、言葉にできない気持ちを表情だけで表し、それに加え演奏、歌、ダンスと見事なまでに演じています。
全ての面においてものすごい完成度だと思いました。数々の賞を受賞したのは当然ではないでしょうか。
そして怒涛のエンディング。あまりにも切なくて胸が詰まる展開に、感情の行き場を、どこに自分の気持ちを持っていけば良いのかわかりませんでした。
決して悲劇ではないんです。ミアは有名女優に、セブは自分の店を持ち、満席の中、愛するジャズを心ゆくまで堪能しながらピアノを弾いています。
そう、二人はそれぞれの夢を見事に叶えたんですね。富も名声も手にし、夢の部分だけ見れば大成功!!
ですが、二人の恋は…
叶わなかった恋を思い出し、自分に重ねた人も多かったのではないでしょうか。
この映画のメッセージは、恋と夢、どちらかを手にするならどちらかは諦めなければならない、ということではありません。
どう受け取りどう解釈するかは人それぞれですし、思うこともたくさんありますが、私の中で最終的に残った思いは、人生において大事な決断をした時、それがどんな選択だったとしても、もし後悔を含むものだったとしても、絶対に後ろを振り向かず前を向いていくべきだということ、
そして時には、決断しないという決断をすることも、一つの決断だということです。
もしあの時、セブがミアにフランスには行くなと言っていたら…
もしミアが、セブに一緒にフランスに来て欲しいと言っていたら…
もし二人が、フランスから戻ったら結婚しようと約束していたら…
岐路に立たされた二人には、いろんな可能性と選択の自由があったはず。どの道を選ぶかによって、未来は全く違うものになっていたことでしょう。
そんな、「もしあの時─」をこれ以上ないほど的確に美しく映像化したのが、ラスト15分間なのです。
[3]言葉にならないエンディングに捧げる、エルメス「オーデメルヴェイユ」
EAU DES MERVEILLES(オーデメルヴェイユ)オーデトワレ/HERMES(エルメス)
トップノート:エレミ、ビターオレンジ、イタリアンレモン
ミドルノート:インドネシアンペッパー、ピンクペッパー
ラストノート:アンバーグリス、オーク、シダー、べチバー、バルサム、ティアーオブシャム
この映画を観ている間、そして観終わった後、どんな香りがふさわしいかずっと考えていました。
ファッションやインテリア、車、建物や小物に至るまで、基本的に映像に映るものはオシャレでカラフル、常にステキな音楽も流れている状態で、ミアはコケティッシュでキュートだし、セブは優しくカッコいい。
どこをとってもサマになる分、何を、誰を、どのシーンを切り取るかによって、贈りたい香りやふさわしい香りも随分変わってきます。
でもやはりここは怒涛のラスト15分、まさに“現実から遊離した精神状態”じゃないかと思うあのシーンから、最後の最後にミアがレストランを立ち去るラストに絞って考えてみました。
映画が終わった直後のあの複雑な気持ち…。こんな時、どんな香りに寄り添って欲しいかなと考えた時に浮かんだのが、エルメス「オーデメルヴェイユ」です。
2004年に発売された“不思議な水”という意味のレディース香水。フローラルの要素を全く含んでいないという画期的な香水でもあります。
湿り気を帯びたシダー、ベチパーと、柑橘類の甘みがじわじわ混ざってきて、時間をかけて熟成された”何か”が芳香を撒き散らしているかのようで、
ウッディ、アンバーを中心としたスパイシーな香りは女性っぽくもあり、男性っぽくもある。
どこかミステリアスで、強い意志のようなものも感じます。
ウッディでスモーキーなトップノートを経て、いつのまにかとても魅惑的で深みのある甘い香りに変化しているんですが、“不思議な水”というだけあって、何か不思議なパワーが宿っていそうな、アーシーで神秘的な力強い甘さです。
いかにも女性っぽい甘さは一切感じない、媚びない感じが、「ラ・ラ・ランド」のしょっぱいエンディングにピッタリだなというのと、銀色の小宇宙が描かれたデザインは「ラ・ラ・ランド」の世界観と遠くなく、決して垂直に立たないボトルも、どんな形であれ立ってるんだから良いんだ、正解はいくつもあるんだよ、というメッセージを送ってくれているよう。
甘酸っぱい過去、甘くない現実、でも決して間違っていない現実、“今”の現実を全うし、絶対に前を向いて歩いていく─
そんな現実を目の前にした時、「オーデメルヴェイユ」の力強く不思議な香りは、あなたの選択は決して間違ってない、自信を持って歩いていくべきだと背中を押してくれるようで、少し強くなれるような気がします。
人生の岐路に立った時、そしてその選択に自信が無い時、そんな時はぜひ「オーデメルヴェイユ」を纏ってみてください。
現実が変わることはありませんが、前を向いて歩いていくための頼もしいパートナーのように、温かく、強く、寄り添ってくれますよ。